修繕工事前の建物診断について

建物診断とは


大規模修繕工事を行う前に、建物の所有者や管理者の依頼を受け建物を詳しく調べることを「建物診断」といいます。人間が健康診断を受けるように、建物も定期的に健康診断を受けることで、どこがどのように劣化しているのか、どの部分から修繕を始めるべきかなどを把握することができます。


建物調査の目的


・建物の現状把握

建物の劣化状況を正確に把握し、無駄なく修繕工事を行う為、必要な修繕箇所を特定します。

• 修繕計画の策定

診断結果に基づいて、最適な修繕計画を立て、無駄な工事を防ぎます。

• 修繕費用の算出

必要な修繕費用を正確に見積もり、予算計画を立てることができます。長期修繕計画は、25年や30年といった長い期間を想定し、この先行う修繕工事の内容や時期、予算などを盛り込んでいます。分譲マンションでは、この計画書をもとに資金計画を検討し、各居住者が支払う月々の修繕積立金の金額を決定します。

• 建物の寿命延長

早期に劣化部分を修繕することで、安全な居住環境が確保でき、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持することができます。


建物診断の種類


建物診断には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

• 一次診断

建物の外観や共用部の簡単な調査を行い、大まかな劣化状況を把握する

• 二次診断

非破壊検査などを行い、建物の内部の劣化状況を詳しく調べる

• 三次診断

二次診断の結果をさらに詳しく分析し、劣化の原因を特定する


調査方法


視覚的な調査


• 目視検査

外壁のひび割れ、塗装の剥がれ、屋根の劣化など、肉眼で確認できる範囲の劣化状況を調べます。


• 赤外線サーモグラフィ

赤外線カメラを使って、建物の表面温度を測定し、断熱性能や漏水箇所などを特定します。


• ドローン調査

高所や広範囲の調査を効率的に行うことができ、外壁や屋根の劣化状況を詳細に把握できます。

非破壊検査


• 打診検査

ハンマーなどで建物を叩いて音を聞き、内部の状況を判断する検査です。


• 超音波検査

超音波を用いて、コンクリートの厚さや内部の欠陥を調べます。


• コア抜き

コンクリートからコアと呼ばれる円筒形のサンプルを採取し、強度や中性化の程度を調べます。

その他の調査


• 図面調査

建物の設計図や施工図を基に、構造や設備の状況を把握します。


• 設備調査

給排水設備、電気設備、空調設備などの機能や状態を調べます。


• 室内環境調査

室内空気の汚染物質濃度や騒音レベルなどを測定します。


調査項目

建物の診断における調査項目は、建物の種類、築年数、目的などによって異なりますが、一般的に以下の項目が調査されます。


構造躯体


• 基礎

ひび割れ、浮き、傾き、鉄筋の露出

• 外壁

ひび割れ、剥落、塗装の劣化、シーリングの劣化

• 屋根

瓦のズレ、破損、苔の発生、漏水

• 柱、梁、桁

ひび割れ、腐朽、シロアリ被害

• 床

腐朽、傾き、たわみ


設備


• 給排水設備

配管の老朽化、漏水、詰まり

• 電気設備

配線の老朽化、漏電、接地不良

• ガス設備

配管の腐食、ガス漏れ

• 空調設備

冷暖房能力、フィルターの汚れ

• 防災設備

消火器、火災報知器の点検


室内環境


• 空気品質

ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物など

• 騒音レベル

生活騒音、交通騒音

• 照明

照度、色温度

• 湿気

結露、カビ

• 換気

空気の流れ


その他


• シロアリ被害

木材の腐朽、蟻道

• アスベスト

外壁材、内装材など

• 耐震性

建物の構造的な安全性


調査方法によってかかる日数


建物の診断における調査方法ごとの日数は、建物の規模、構造、調査項目、専門業者のスケジュールなど、様々な要因によって大きく異なります。


一般的な調査方法と日数の目安


• 目視検査

半日~1日程度

o 外壁のひび割れ、塗装の剥がれなど、肉眼で確認できる範囲の劣化状況を調べます。

o 比較的短時間で実施できるため、簡易的な調査に適しています。

• 非破壊検査


o 打診検査: 半日~1日程度

 ハンマーなどで建物を叩いて音を聞き、内部の状況を判断する検査です。


o 超音波検査: 数時間~1日程度

 超音波を用いて、コンクリートの厚さや内部の欠陥を調べます。


o コア抜き: 1日~数日

 コンクリートからコアと呼ばれる円筒形のサンプルを採取し、強度や中性化の程度を調べます。コアを採取し、検査機関に送って分析する必要があるため、時間がかかります。


• 設備検査

数時間~数日

o 給排水設備、電気設備、空調設備などの機能や状態を調べます。設備の種類や点検項目によって時間が異なります。


• ドローン調査

半日~1日程度

o 高所や広範囲の調査を効率的に行うことができ、外壁や屋根の劣化状況を詳細に把握できます。天候に左右されるため、日数が延びる場合があります。


• 室内環境調査

数時間~1日

o 室内空気の汚染物質濃度や騒音レベルなどを測定します。測定項目や測定回数によって時間が異なります。


調査日数に影響を与える要因


• 建物の規模

大規模な建物ほど、調査範囲が広くなり、時間がかかります。


• 構造

木造、鉄骨造、RC造など、構造によって調査方法が異なり、時間がかかります。


• 調査項目

調査項目の数が多いほど、時間がかかります。


• 専門業者のスケジュール

複数の建物が同時に調査されている場合、専門業者のスケジュールによって調査期間が長引くことがあります。


• 調査方法

非破壊検査の種類や、コア抜きの数など、調査方法によっても時間が異なります。


• 天候

ドローン調査など、屋外で行う調査は、天候に左右されます。


調査期間を短縮する方法



• 調査項目を絞り込む

どうしても知りたい項目に絞り込むことで、調査期間を短縮することができます。


• 複数の調査員を配置する

複数の調査員を配置することで、並行して調査を進めることができ、時間を短縮することができます。


• 事前に情報を集める

建物の図面や過去の調査資料などを事前に収集しておくことで、調査時間を短縮することができます。


調査期間が長引く場合


• 悪天候

雨天など、天候が悪い場合は、屋外での調査が難しく、調査期間が長引くことがあります。


• 予想外の劣化

調査中に、予想外の劣化が発見された場合、追加調査が必要となり、時間がかかることがあります。

調査期間は、建物の状況や調査内容によって大きく異なります。 事前に調査業者に相談し、具体的なスケジュールについて確認することをお勧めします。


費用相場


建物診断にかかる費用は、建物の種類、規模、調査項目などによって大きく異なります。

一般的に、費用に影響する主な要素は以下の通りです。


• 建物の種類

一戸建て、マンション、ビルなど、建物によって構造や規模が異なるため、調査範囲や必要な専門知識が異なり、費用も変動します。


• 建物の規模

建物の延床面積が大きくなればなるほど、調査範囲が広がり、費用も高額になる傾向があります。


• 調査項目

外壁、屋根、内装などの目視調査から、非破壊検査、構造計算まで、調査項目の数が多くなればなるほど、費用も高くなります。


• 調査の深度

表面的な調査だけでなく、構造的な問題を詳しく調べる場合は、費用が高くなります。


• 専門家の資格

建築士や構造計算技師など、資格を持つ専門家による調査の場合は、費用が高くなる傾向があります。


• 地域

地域によって人件費や物価が異なるため、費用も変動します。


費用相場の目安


一般的に、一戸建て住宅の一次診断(目視調査中心)の場合、5万円~7万円程度が相場と言われています。しかし、二次診断(非破壊検査など)や三次診断(詳細な構造計算)を行う場合は、10万円以上かかることもあります。

マンションの場合、規模や調査項目によって費用は大きく異なりますが、数十万円から数百万円かかるケースもあります。


費用の算出方法


建物診断の費用は、業者によって算出方法が異なります。


• 定額制

調査項目がパッケージ化されており、一律の料金で提供される場合


• 時間制

調査に要した時間に応じて費用が算出される場合


• 項目別見積もり

各調査項目ごとに費用が設定されており、必要な項目を選択して費用を算出する場合


費用を抑える方法


• 複数の業者に見積もりを依頼する

複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、費用を抑えることができます。


• 必要な調査項目を絞り込む

すべての項目を調査するのではなく、必要な項目に絞り込むことで、費用を抑えることができます。


• 補助金制度を利用する

一部の自治体では、建物診断に対する補助金制度が設けられている場合があります。


大切なのは、費用だけでなく、調査の質や信頼できる業者を選ぶことです。


建物診断を受ける際の注意点


• 専門業者に依頼する

建物診断は専門的な知識と経験が必要なため、必ず専門業者に依頼しましょう。


• 複数の業者から見積もりを取る

複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。


• 診断結果をよく理解する

診断結果の内容をしっかりと理解し、修繕計画に反映させましょう。


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