修繕工事とは
修繕工事は、築年数や外的要因により劣化した箇所の修復や建物の資産価値を守る為に行います。
設備の補修や交換をし、劣化した部分を建設時と同等位の水準に戻すことが目的となります。
何故大規模な修繕工事が必要なのか
建物は、完成した直後から気候や温度の変化により、外壁や給排水管、屋上の防水設備等の劣化が始まっています。塗装工事や防水工事をしないと亀裂から雨水が入り鉄筋が錆び、階段が崩れてしまう等、崩壊の危険があります。建物の方が人よりも寿命が長いので、メンテナンスをしっかりと行えば100年はもつと言われています。
そして快適な住環境を維持できるよう、共有部分の設備や性能を、時代の変化や技術の進化に合わせ機能をグレードアップしたり、流行やトレンドに合う改修を実施し、建物本来の老朽化や大きな不具合を防ぐ前に計画的に修繕していく必要があります。
大規模修繕工事の流れ
1 修繕委員会の結成
マンションの理事会による決議で設置される組織です。
修繕委員の構成員はマンションの移住者となり、管理組合の掲示板や、広報誌などで募集をするのが一般的です。理事会と修繕委員で連携をしながら、大規模修繕工事を進めていきます。修繕委員を設置しなくても工事を進めていくことは可能ですが、修繕委員がいることで、より住民に寄り添った項目の修繕ができ、その後の満足度もより高くなるでしょう。
修繕委員の役割とは
修繕計画の作成が最も重要となります。修繕計画は国土交通省のガイドラインに沿って計画していきます。その他にも工事業者の選定や打合せ、調査診断の立ち合いをし、修繕箇所の調査をします。
修繕に必要な期間、予算の調査や計画も進めていきます。
組合員の意見を集約し、工事を円滑に進める為、適切な計画を立て管理をし、施工業者と工事内容や費用について話し合い、修繕計画を理事会に提出し、承認後ようやく工事を行う事ができます。
2 建物調査診断
大規模修繕工事を行う前、建物や設備の劣化状況を正しく把握し、適切な修繕計画を組む為に建物診断士に調査を依頼します。
診断内容は以下の4項目です。
・経年劣化診断
・配管劣化診断
・耐震診断
・収益性診断
調査員が機械や目視、触診で劣化を確認し、緊急度や修繕箇所の検討をします。
経年劣化診断
どのくらい建物が傷んでいるかを目視、触診で確認します。シーリング材の劣化状況を触れて確認したり、外壁や床を叩き、その音によって剥離や浮きといった異常を確認し、写真付きの報告書と予算書を提出してもらいます。
対象箇所
・屋上の防水
・外壁
・鉄部
チェックポイント
・構造上の問題や、隠れた傷や欠点がないか
・防水の寿命
・仕上げ材の浮きや割れはないか
配管劣化診断
機器や装置を用い、配管の腐食や詰まりなどを調べる
対象箇所
・衛生配管
・空調配管
・埋設配管
・ガス配管
手法
➀内視鏡調査
工業用の胃カメラのようなもので、スコープを使用し、配管内の内部汚れの付着状況、継手部分の劣化状況等を観察。
➁超音波肉厚測定調査
配管の外側に超音波を当てパルスを送り減肉状況を数値データ として取得。管寿命の算出が可能。
➂X線調査
工業用X線装置により配管内の透過撮影を行う。配管内部に付着した異物、減肉状況、閉測状況を解析。
➃サンプリング調査
配管を切り取り分割し状況を観察します。洗浄し腐食状況を確認し減肉値を測定します。誰が見ても劣化状況が明確にわかります。
耐震診断
現在の建物の構造強度を調べ、今後起こりうる地震に対する耐震性を計算によって導き出し、破壊や崩壊の可能性の有無や程度を数値的に把握することです。日本の耐震基準の変遷、建築基準法は1950年に制定され、耐震基準は1971年と1981年、2000年に大きな改正が行われ、 このうち1981年の建築基準法の改正によって、1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は「旧耐震」、1981年6月1日以降の確認申請を受けた建物は「新耐震」と呼ばれます。耐震診断義務化は、原則として、1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した建築物が対象となります。特に旧耐震基準で建っている建物の耐震化が課題となっており、速やかな診断と改修の実施が求められています。
STEP1 現地調査 目視で設計図書、過去の修繕履歴を確認
↓
STEP2 適した診断を行う
第一次診断
壁の多い建物に適している。壁・柱の断面積とコンクリート強度から耐震性能を求める最も簡易的な方法です。
第二次診断
主に壁や柱などが鉛直部材の建物。一次診断よりも診断性が高く公共建築物で最も利用されている診断方法。壁・柱に加え鉄筋量の影響も考慮し建物の耐力と粘りを診断します。
第三次診断
主に加構構造(柱・梁)で耐震性が決まる建物に向いて います。高層建築、鉄骨造が対象となることが多く、 二次診断よりさらに難易度が高い計算方法です。
壁・柱・鉄筋に加え、梁も考慮し、建物の保有水平
耐力を(地震で崩壊しないために必要な強さ)求めます。
収益性診断
所有するマンションが他の建物と比べてどのくらい価値があるのかも建物診断の結果から導き出すことができます。
おおよその建物劣化診断にかかる費用
・小規模マンション 20万~30万
・中規模マンション 30万~80万
・大規模マンション 50万~100万
3 修繕工事の設計
大規模修繕工事は12年~15年周期で実施されます。修繕工事の設計には専門の知識が必要な為、基本的にはコンサルタント会社に依頼します。
①修繕内容や工法
②概算の予算の算出
③図面、特記仕様書の作成
④見積要領書の作成
4 施工会社の選定
5~10社ほどの業者から見積りをとり、検討。
5 工事説明会の実施
施工業者が住民へ工事の説明をします。
6 工事開始 完了
修繕工事の内容
1 仮設工事
・共通仮設工事
現場事務所の設置、作業員の休憩所、警備員配置のコスト等
・直接仮設工事
高所作業をする時に作業員の転落や工具類の落下といった事故を防ぐ為足場を設置し、安全性を確保します。足場にも種類があり、組立て足場と吊り足場に大別されています。
2 下地補修工事
塗装工事や防水工事などの施工をする前に塗面を補修する工事のことです。塗料を塗る前に傷んでいる部分を補修することを下地補修工事といいます。亀裂や凹凸、ピンホールや欠損などを削り取ったり埋めたりする作業も含みます。コンクリートは外気の気温が低いと収縮し、温度が高いと膨張するという性質を持っていることから、確実にひび割れます。
3 タイル補修工事
タイルの浮きやひび割れなどを補修すること。不具合がある部分をメンテナンスしなければ雨風によりコンクリートの劣化が広がってしまいます。10年に1度は外壁タイルの状態を調査し、定期的に修繕工事をする必要があります。
4 シーリング工事
建物を繋いでいる部分、外壁材同士の隙間やサッシなどの隙間を埋め、防水性を高め気密性確保することがシーリング工事の役割です。躯体への浸水や室内への漏水を防ぎ、腐食や劣化を防ぐことができます。 一般的にシーリングの耐用年数は約5年~10年と
言われています。補修方法は2つあり、古いシーリング材を撤去し打ち替える方法と、古いシーリング材の上から新しいシーリング材を築充填する増し打ちがあります。築年数や何回目の修繕 工事かによって工法は異なります。
6 鉄部 塗装工事
錆と腐食からの保護や安全性確保の為、鉄部塗装工事は行われます。鉄は外気や雨水により酸化し錆が出て腐食します。鉄部は錆びてしまうと性能を果たさないので長期間使用出来るようにする為、しっかりと塗装し続ける事が大切です。鉄部塗装工事の周期は一般的に5~6年に一度と言われています。まず表面の艶がなく
なり、次第に色褪せ、その後チョーキング現象がおこります。チョーキング現象が現れたたまま放置していると、ひび割れ塗膜が剥がれ落ち鉄部が剥き出しになってしまいます。適切な材料を使用し、鋼製部材の耐久性と安全性を保ち美観を維持しましょう。
7 防水工事
屋上やルーフバルコニー等の防水性能が失われてしまうと、雨水等が侵入し、雨漏れが発生したり、建物内部の躯体を腐食させてしまう恐れがあります。大きく分けて4種類の方法があります。
・塗膜防水
使用される材料はウレタンゴム系、アクリル系、ポリエステル樹脂(FRP系)、ゴムアスファルト系が主原料となります。液状の樹脂や合成ゴムなどを刷毛やヘラ、ローラーを用い、何重にも塗り重ね、吸付機で成膜、硬化させつなぎ目のない防水層を形成する工法です。密着性があり割れづらく塗る作業なので複雑な場所にも対応できます。
・シート防水
防水シートを貼ることで雨水の侵入を防ぐ方法です。複雑な形状の屋根には向いておらず平らな屋根にのみ使用されます。
施工に使われるシートは主に2種類あり、違いは素材です。一つ目が合成ゴムを使った防水シートです。二つ目は塩化ビニールの樹脂で作られた防水シートで、現在ではこちらが主流となっています。厚みもゴムシートより厚くできています。施工方法はどちらもプライマーで屋根に貼り付けていきます。シート状なので厚みが同じなので均質な防水層が形成できます。直射日光 や豪雨、強風にも強く耐久性に優れており安定した性能を発揮できます。
・アスファルト防水
主に学校やマンションの屋上や屋根で採用されることが多いです。合成繊維の不織布に溶かしたアスファルトの液を染み込ませたルーフィングを二層以上に貼り重ねて防水層を形成する積層
工法です。二層以上に仕上げることで、より水密性を持った丈夫な防水層が作られます。
施工方法は3種類あります。
トーチ工法
バーナーで炙り、シートを隙間なく溶接加工し高い防水効果を発揮することができます。
常温工法
自着層と呼ばれるゴムアスファルトの粘着層をコーティングし交互に張り合わせていく工法です。火を使用しないので安全で、臭いも発生しない為環境への配慮にも優れています。
熱工法
大きな窯でアスファルト熱して溶かすので煙やにおいの発生、火災恐れがあります。一番歴史があり信頼性の高い工法です。
8 その他工事
大規模修繕工事の周期と期間
1回目の大規模修繕工事は、新築から12~15年後に実施されることが多いです。この時点では建物の劣化がそこまで進んでいないため、部分的な補修や修繕で済む場合も多く、費用も比較的抑えられます。
2回目以降の大規模修繕工事は24~30年後です。1回目よりも大規模な工事が求められます。外壁の全面塗装やバルコニーの修繕など、建物の主要な部分を補修する必要があります。また、耐震補強工事が必要になる場合もあります。3回目は36~42年後くらいです。
あくまで目安であり、建物の状態や使用状況によって適切な周期は異なります。
大規模修繕工事の工期は、建物の規模や修繕内容によって異なりますが、一般的には2~3ヶ月程度です。高層階や複雑な修繕内容の場合は、4ヶ月以上かかる場合もあります。
大規模修繕工事の費用
築年数が経過するほど、修繕が必要な箇所が増え、費用も高くなります。マンションの規模で表しますと一戸あたりの負担額は以下の通りです。
・30戸未満のマンション→75万~100万
・30~50戸のマンション→90万~120万
・50戸以上のマンション→100万~150万
他にも建物の構造によっても変わりますし、占有面積が大きいほど費用もあがります。
複数の業者から見積もりを取ることで、適正な価格で工事を依頼することができますし、高耐久性・高機能な材料を使用することで、将来の修繕費用を抑えることができます。
その他に、補助金の活用、 国や自治体から、大規模修繕工事の費用の一部を補助してくれる制度もあります。
マンションの大規模修繕工事は、多額の費用がかかるため、事前にしっかりと準備し、計画しておくことが重要です。
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